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  • 執筆者の写真YCARP

【イベントレポート】日本財団実践報告会

更新日:2022年10月11日

日本財団 ヤングケアラーと家族を支えるプログラム「民間のヤングケアラー支援に関する実践報告会~ケアを担う子ども・若者と家族を取り残さないために~」(報告レポートby.河西)


8月31日、今年度よりYCARPが助成を受けている日本財団様主催の実践報告会に参加しました。共同発起人の斎藤・河西が基調講演と助成事業の報告をさせていただきました。

登壇者は現地(東京都港区赤坂にある日本財団ビル)から参加し、視聴者はオンラインで参加しました。


当日の参加団体はこんな感じ。

日本財団様からの助成を受けている6団体です。

・一般社団法人日本ケアラー連盟

・一般社団法人ケアラーアクションネットワーク(CAN)

・全国児童家庭支援センター協議会

・一般社団法人ヤングケアラー協会

・学校法人立命館

・特定非営利活動法人Link・マネジメント


CANの持田さんやヤングケアラー協会の宮崎さんとは以前よりFacebookで交流はあったものの、今回初めてお会いできました。

日本ケアラー連盟さん、児家センさん、Linkさんとは全くの初対面でした!


みなさん、それぞれ異なる取り組みをされていて非常に良い刺激になりました。

各地域で急増する啓発研修に対応した動画制作、ヤングケアラーの就労支援、中高生向けのプログラムや映画制作、児家センのケースを対象とした調査研究、認知症の家族をケアするヤングケアラーに特化した支援と研究…


さて、立命館は大学として何ができるのでしょうか。

日本財団様から助成を受けて行っている事業は主に4つ。


①定例ミーティング(2021年9月~、毎月1回)

ミーティングを通じた当事者の経験の共有・多様なニーズの可視化

②就活支援(2023年1月)

ケアラーとしての経験が「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」という指標では評価されない課題

③日本における家族まるごと支援

・専門職養成講座(11月)

・イギリス視察(2023年2月)

・オンライン国際シンポジウム(2023年2月)

④居場所・居住支援(11月~)

家から離れるという経験をし、ひとり暮らしへのイメージをもつ


当日の実践報告では、「若者ケアラーのつどい」で話し合ったことを河西が図で整理&モザイク処理・匿名化の上で提示し、居住に関する子ども・若者ケアラーの悩みについて少し紹介しました。

18歳という年齢で切れないシームレスな支援はもちろん大事ですが、それと同時に各世代に固有の課題もあります。

特に若者世代の課題として挙げられるのは「家族との距離化」。

衛生面の悪さ、家族との物理的・心理的距離の近さ、緊張感のある生活、家族との折り合いの悪さ、ネガティヴな感情が家の居心地の悪さにつながります。

そしてケアラーは家を離れることを考えますが、家族にひきとめられること、離れた後の家族のケアが立ち行かなくなることへの不安からすんなり家を離れることが難しいという実態があります。私自身、統合失調症の母がいますが、家をでて一人暮らしをすることを決めたのは、母の退院の調整がいったん落ち着いたタイミングでした。当時は、不安がありながらも「えいや!」と踏ん切りをつけました。

家族は私がいない生活に当初は少し慣れない様子でしたが…。


ケアラーが家を出た後、家族にも変化が起きます。例えば親の病状が悪化すること。ケアラーは家を離れたことに対して後悔することがあります。一方で、親が家族以外の人に頼るようになるという変化も起こり得ます。ケアラーは少しずつケア役割から離脱し、様々な人との交流の中で自分自身の生活領域を広げ、新たなことにチャレンジできるようになったり、離家を家族自身の状況を変えるチャンスと捉えるようになったりします。

同時にロールモデルとの出会いもあり、家族を相対化してみるようになりますが、家族からたびたび連絡がきたり一時的に帰省したりするなかで、再び家に戻る選択をすることもあれば戻らない選択をすることもある。


こんなことがいまわかっています。

育った家か、一人暮らしか…この二択が多い中で、前者から後者へはいきなり「えいや!」と勇気をもって飛び出すしかない現状があります。何日か家を離れてみて徐々に慣れていく…そういった経験ができないものか、と考えています。ケアラーは家を離れた後の家族の状況がどうなるのか、不安になることがあります。

ここからは、ケアラー自身への支援だけでなく、家族への支援もセットでなければケアラーが安心して巣立っていくことができないという課題があるといえます。

「家族まるごと支援」、今回の実践報告会のひとつの大きなキーワードだったと思います。

私たちYCARPは大学に所属するプロジェクトとしてイギリス視察を含めた研究活動を大切にし、この「家族まるごと支援」についてどんな課題・実践があるのか、明らかにしていきたいと思います。


実践報告会のなかでは非公開パートとして、最後に登壇者同士のグループディスカッションがありました。それぞれ感じている課題に共通していることもありました。

当事者とつながる難しさ、スタッフのリスク管理を含めた組織運営の難しさ、個別対応、当事者の安心・安全な語りの場の保障など、共通する課題がありました。

一方で民間団体の強みとして、当事者との距離の近さ、気軽に話せる関係、広報等におけるデザイン力などもありました。


政府・自治体の施策が進むなか、民間の強みを活かして活発な議論が今後もできたらと思います。


ただ、その時に忘れてはならないのは、研究や支援に関わる当事者の声はあくまで一握りの声だということ。声なき声をどのように聴くのか。私たちはそれを問われています。


お互いのもつノウハウ・スキル・コネクションを活かして、少しでも当事者の声が大切にされる社会を目指していきたいです。

(文・河西)



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