ヤングケアラー発祥の国、イギリスには当事者によるソーシャルアクションの一環として「Young Carers Action Day」があります。今回、YCARPでも「当事者の声を社会に発信する」ことをコンセプトに、日本版ヤングケアラーアクションを開催しました。
2月25日
1日目は約80名の当事者・元当事者、サポーターにご参加いただきました。
<啓発パンフレットのお披露目会>
今日、18歳未満でケアを担う子ども、いわゆるヤングケアラーに関する啓発がさかんに行われています。パンフレットなどの出版物も自治体等でつくられています。一方で、ライフコースの視点からみた、18歳以降も含めた子ども・若者ケアラーの経験についてはあまり整理されていません。YCARPでは子ども・若者ケアラーがどのようなライフコースを経て、そのなかでどのようにケアと付き合ってきたのか、京都橘ライオンズクラブ様の助成を受けてパンフレットを制作しました。
<Saul Becker氏(マンチェスターメトロポリタン大学教授)による講演会>
1日目参加者感想文抜粋
イギリスのヤングケアラーの支援の状況とともに、欧米のヤングケアラー支援の状況をお聞きできたことがとても勉強になりました。あわせて日本の位置や課題を理解することができました。
パンフレットでは、当事者が作るからこそ今ケアラーとして頑張っている人たちに寄り添ううことのができるのだと伝わってきました。まだまだ、若者ケアラーへの視線はなかなか向けれらていない現状ですが、1人でも多くの手に渡って若者ケアラーさんの生きる力になればと思っています。Saul Becer氏の講演会はあっという間で、もっとお聞きしたかったし、出た質問にもどのような視点をもっているのか答えて頂きたかったです。イギリスも日本も当事者が感じていることに違いはなく、それだけに法律も権利もあるイギリスのようなとぎれない支援の厚さが大切なのだと思いました。 学校現場も子どもに関わる責任を持っており、ヤングケアラーが支援に繋がる機会があること、それに伴う家族丸ごと支援の在り方も考える時間でした。ケアがありながらも自分の人生を歩めるようにどのような支援が出来るのか、ケアのニーズが違うケアラーの一人ひとりに合わせたサポートは何かゆっくりと落とし込んで返していきたいです。
講演の最後に、「なぜ、ヤングケアラーになるのか」ということについて「トリガーがある。家族の一員に病気や障害、薬物、トラウマ、DV、アルコールの問題などがあると、子ども達はこの状況にも巻き込まれていく」ということが印象的でした。裏を返せば、ケアラーになることは特別なことではなくて、どの人にでも起こりえることとして支援の在り方を考えていかなければならないと思いました。
学校や教育者がヤングケアラーを発見するという認識が、早期発見・早期対応につながることを学びました。一方、教員の方々の負担も大きいため、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが相談窓口になることで、家族支援も含めたコーディネートも可能になるのではと体制の一つとして感じました。 まずはヤングケアラーの存在を知ってもらえるよう、自分の立場でできる普及啓発を進めて行きたいと思います。
啓発パンフレットを早く見てみたいなぁと思いました。海外の状況を聞く機会がないことや、実際にネットなどで知れても、今回のように直接zoomで聞くことができることはとても貴重なことだと思いました。日本の支援の在り方もwhole family approch にし、縦割り行政を解消できるし、サービスの提供もそれぞれに出すことを調整する高齢者のケアマネ、障害者児の計画相談員等の給付もwhole family approchで見直しできるようになったらいいのになぁと思いました。
3月4日
<Sara Gowen氏(Sheffield Young Carers)による講演会>
「ヤングケアラー支援の展開:聴くこと、学ぶこと、ケアから離れることの重要性」
13歳のヤングケアラー、Lucyにも登壇していただきました。
2日目参加者感想文抜粋
シェフールドの先駆的な取り組みから学び、当事者を中心においた取り組みを日本でも広げて行きたいと思います。ヤングケアラーの声を聞く存在が大切だとのご指摘、本当にそうだと思います。
こちらでも具体的な取り組みをお伺いできて勉強になった。特に,当事者の声をとても大切にされていることや,家族を含めた包括的な支援の詳細について知ることができ,そのような点について自分も今後大切にしながら支援に取り組みたいと感じた。
Salaさんのケアラーに対する基本姿勢が「ケアラーの声を聴き、ケアラーを尊重すること」に一貫していると感じました。講演の内容も自分が支援しているというニュアンスは感じられず、ケアラー当事者の声を聴き、発信することなどケアラーの存在を大切にし、その姿勢がケアラーの自信や自分らしく生きる選択を可能にしていると感じ、本当にすばらしいと感じました。Salaさんの姿勢をお手本にしたいと思います。
「プログラムの構造化」と「当事者や家族が彼ら自身の専門家」と捉えて家族まるごと支援するこが、ポイントだと感じました。 これらの考え方には、同じくイギリスが発祥の「メリデン版訪問家族支援(ファミリーワーク)」に通じるものがあり、具体的な支援の枠組みを考えていく上でとても参考になりました。
当事者を真ん中に置いた支援、家族丸ごと支援を考える内容でした。イギリスでも日本でもヤングケアラーは見えない存在ということで学校、医療機関、行政がヤングケアラーを見逃さない仕組みは、当事者と伴走する形で、本人の声をしっかりと聴く姿勢がみえました。反対に日本は支援するというやや上から目線で、こういった支援があればいいでしょうというケアラー本人の声が反映されにくく、これからの課題だなと思いました。また、当事者が声を上げる時、メディアに搾取されないプライバシーの在り方や練習もあり、日本にもこういった取り組みが必要だと感じました。
Sheffield Young Carersでは当事者の声を届ける沢山の動画が制作されています。
Who am I? Young carers poem and animation https://youtu.be/A1aialRYG50
Young Carers National Voice (YCNV) Mental Health Campaign 2022 https://youtu.be/J0BY5P5j1zg
Young Carers and Education (2022) https://youtu.be/h30GesV8vhg
Family Project Video https://www.sheffieldyoungcarers.org.uk/help-for-families
YCARPでは今後日本のみなさんにも動画を視聴していただけるように、日本語字幕をつけてホームページに公開する予定です。
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